会いたい

 本当に、私は疲れていた。
 重い荷物を背負いながら、ずっと歩かなければならないように、本当に、とても疲れていたのだ。
 幽霊は心配そうな顔を私に向けていた。
 私は、気をとりなおすように笑った。

「その人ね、とてもいい人なの。今、研修医として大学病院に勤めてるんですって。
 でも、高飛車な感じもなくて、優しくて、気を使ってくれて、透のことも知ってて、それでもいいからつきあってくださいって言ってくれたの。本当にいい人なの、もったいないくらい、いい人なの」

 早口にまくしたてる。
 すぐに全部吐き出してしまわないと、みっともなく泣いてしまいそうだった。
 お見合いの席での高木さんの姿が思い出される。
 でもその声も顔も、話し方も、もう虚ろだ。
 高木さんは優しい。
 透と同じように。
 高木さんはいい人だ。
 透とは違うけれど。

 わかっている。わかっているのだ。

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