Sweet Chocolate Kiss(短編)
逸都は私の手を握ったまんま、身動き一つしなかった。
夕方の風に揺れる白いカーテン。
遠くに聞こえる吹奏楽部の調べと運動部の活気ある声。
夕焼け色に染まる部屋の中で私と逸都だけの時間が止まっているかのように…。
逸都は身動き一つせず、一言も発そうとはしなかった。
そんな逸都の様子が気にかかって。
「逸都…??」
彼の顔を覗きこむと
「ホント…、俺は都合のいいコトばっかり言う男だな。」
そう言って。
傷ついたような顔をして逸都が笑う。
「ちょこはこんな俺でホントにいいのか?」
「…え?」
「俺はバカだし、鈍感だし。梅ちゃんみてぇに気の効いたセリフも言えそうにねぇぞ??」
そう言って。
逸都は私の顔を見ないまま、私の手をさらに強く握りしめる。
「俺は、これからもお前よりバスケを優先する毎日を過ごすと思う。きっと寂しい想いもきっと人一倍させちまう。
そんな…俺でもいいか??それでも…お前はついてきてくれるか??」