伯爵と妖精~新しい息吹~
疲れてきたが、貴婦人を無下にすることもできない。
すると、
「リディアさん、私たちにもお話を聞かせて頂戴」
リディアを貴婦人の輪から抜き出したのは、ローデン三姉妹だった。
「リディアさん大変でしょ?」
「やぁね、貴婦人ったら」
そう言ってクスクス笑う。
「でも私たちももうすぐ貴婦人になるのよ」
「えぇ!そうなの?」
驚くリディア、
「私たち婚約したの、それから結婚よ」
なんと早い話しだ。
「私たちの婚約者も小さい動物が好きなのよ」
嬉しそうに話す三姉妹、
「そうなの、本当におめでとう」
喜ぶリディアに、
「ねぇリディアさん、子供の名前はもう決めた?」
長女が興味深々に問う。
「まだ…なの…」
すっかり忘れていた、
「そうなの?私はもう決まってるわ」
「わたしもよ」
「あら、わたしもよ」
三姉妹は楽しそうに話していた。


お茶会から帰ってきたリディアをエドガーが笑顔出迎えた。
「玄関まで来なくてもいいのに」
「愛しい妻と子に早く会いたかったんだよ」
正確にはお腹にいるね、と笑いながら抱きしめる。
「あ、そうだわ!エドガー、この子の名前を決めましょう」
もうそろそろ出産日が近いから早く決めよう。

ティールームに入り、暖かい紅茶を口にする、
「女の子だったら、宝石みたいに輝いて欲しいからジュエリーはどうだい?」
「派手じゃないかしら?」
イマイチぴんとこなかった、
「アテネはどうかな…?」
「アテネ?」
確か戦いの女神だったはず、
「そう、ギリシャ神話に出てくる女神の名前だよ。アテネは国の民を守るために戦うんだ」
まるで昔のエドガーだ、
「でもどうして?」
「この子には大切な人を守れる力があって欲しいんだ…」
自分は大切な仲間を守りきれなかった。
「でも女の子よ?」
「それでもだよ」
戦いは女も男も関係ない。
弱気者は死を待つだけ、そんな辛い思いをこの子にはしてほしくない…。
「アテネね、女神から貰う名だからきっと幸福をもたらしてくれるわ」
そうだね、と微笑み手を握った。
「あ、でも男の子場合は?」
忘れかけていた、
「それはもう決まっているよ。ティルだよ」
あぁ、なるほど。
「ティル元気かしら…」
コウノトリの精だったティル。また会えたらいいと思っていたが、会える日はやってこなかった。
「これで決まりだね、早く産まれてきてほしいよ」
頬にキスをおとし、微笑えんだ。
「せっかちなお父様だわ。でもきっともうすぐよ」
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