忘れないよ、



「…留衣??」

抱きついたあたしを、
君は少し震える手で包みこんだよね。


「留衣…?」
「…何」
「…なんで??」
「…何が」


あたしはすねた子供みたいに、
ぶっきらぼうに話した。


「俺のこと、もう嫌い…?」
「…嫌いなわけないじゃん」

「…」

「大好きだから、寂しかったの」

「…え」

「別れよって言ったの取り消し」

「…え?」

「ごめん、やっぱ別れたくなくなった…
晴基が好き。絶対離れられるわけない」


あたしはツンツンした喋り方で、
棒読みみたいに気持ちを伝えた。

君があたしを包み込む手に、
少し力が入った。

「…嘘」

信じられなかったのか、
君はそう呟いた。



「…本当だよ」

君の吐く息がおでこにかかる。

君は少し泣きそうな声で、こう言った。

「よかった…俺、留衣と離れたくないよ」


あたしはまだ、いじけてるみたいに言う。

「うん。あたしもそうみたい」



そう言ってぎゅーってして、

「じゃあ、これからも、
伊賀夫婦、ってことで、よろしく」

君が照れたようにそう言って、
あたしも、うん、と返事をした。





やっぱり君を、
手放すことなんか出来ないんだよ。








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