夏休みのTシャツ

・掴まれた右手

「もぉ、痛いし。ほんとに緊張してるの?」

「緊張してるって。ほら。」

恭ちゃんがあたしの右手を取って、自分の胸にあてる。

「だろ?ドキドキしてない?」

恭ちゃんもしてるけど…
あたしの方がドキドキしちゃってるから。

そういうことをさりげなくしちゃうんだもん。ずるいよ。


━━ドキン。

━━━ドキドキ。

━━ドキン。

━━━ドキドキ。

あたしの心臓の音の方が恭ちゃんの鼓動より早いし……


どうしたらいいのかわからなくて、そのまましばらく動けない。

仕方なしにうつむいてると、開会式の案内のアナウンスがかかった。

あたしは胸にあてられた右手を掴む恭ちゃんの手を軽く振り払った。


「ほら、もうすぐ開会式だよ。行かなきゃ。じゃあ、お母さん。行ってくるね。」

あたしは慌てて席を立った。

そして、後輩たちと一緒に開会式へと向かう。

右手にはまだ掴まれた感触が残ってる。

恭ちゃんの手いつからあんなに大きくなったんだろう。

ちょっとゴツゴツしてたし。

掴まれた右手を自分の左手で握ってみる。

恭ちゃんの手よりだいぶ小さいあたしの左手。


なんでドキドキしてるのか、わからなくなっちゃった。



< 21 / 47 >

この作品をシェア

pagetop