恋色カフェ



そんな、妖艶に微笑まれたら、抗える訳がないじゃない。


「……わかりました」

「いろいろ、楽しみにしてる」


危険な香りのする、その顔。あかねがうっとりしながら、いい、と言った気持ちもよくわかる。


──けど。一応付き合ってると思いたい身としては、たまったもんじゃない、というのもまた、事実。



店長の手がふわりと私の頬を包むと、触れるだけのキスをした。


「おやすみ」と優しく囁いた声が、車を降りてからも、耳の中でこだまする。



──物足りない。


そんなことを思うくらいなら、さっき素直に受け入れれば良かったんだ。


どこまでも勝手な私は、店長の車が見えなくなっても、ただ、暗闇をずっと見つめていた。





あかねに言われた、肝心なことを忘れたまま──。




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