恋色カフェ





────とはいっても。

何か特別なことがあった訳ではなかったのだけど。



あれからベッドの上で、溶けてしまいそうな程の濃厚なキスを繰り返して。


そのまま、その先に進むとばかり思っていた。

……正直、進めばいい、とも思っていた。



私達の間に、確かなものは何も、ないから。

何かしらの繋がりが出来れば、少しは安心できるんじゃないか、って。


たとえそれが“体の繋がり”であっても。



叶う筈のないことが、思いがけず、本当に思いがけず現実になってしまったせいなのか。

どうしたらこの人が離れていかないか、気がつけばそればかりを考えてしまっている自分がいる。


どうやら、私の心の中の『余裕』という言葉は消えかけているらしい。


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