狂い人の世界 ~マネキンに恋した少年~
神と閻魔大王
ここは、とある特別養護老人ホーム。
ここが実は、天界だと言う噂を聞きつけました。
しかも驚いたことに、神様と閻魔大王が、お見えになるとか。
で、お話を伺うべく、来てみたのですが…。
あの、テレビの前のお二人がそうでしょうか?
そっと、盗み聞きしてみましょう。
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神 =ねぇ、お前。お前は、どう思うかね?
   この少年の話を。
   少年は、自分は狂人ではないと、言い張るんだが。 
 
閻魔=さぁ・・。
   私には、はっきりとは分かり兼ねます。

神 =どうしてかね?
   その頭脳明晰さにおいて、
   右に並ぶ者なしと言われるお前に分からぬとは。

閻魔=とんでもございません。
   私如きが、そのような。
   おからかいになっては困ります。
   あのファウスト一人、騙すことが、
   論破できなかったのでございますから。

神 =あのファウストは、何もかもを知り尽くした人間だ。
   さしものお前でも、無理であろうよ。

閻魔=ありがとうございます。
   さてさて。
   一体、
   人間世界には、真実などと言うものがあるのでございましょうか?
   その時代では正しい事であっても、
   後の時代になると誤りだとされる事が、
   多々あるようですし。

神 =なるほど・・。
   それも、一理あることだな。
   では、お前はどう思うかね?

閻魔=私でございますか・・。
   神であるあなた様がご判断に迷われている事に、具申するなど、
   おこがましくはありますが・・。
   有態に申しまして、永遠の真理など、無いように思われます。
   人間世界は勿論のこと、恐れ多い事ですが、この極楽におきましても。

神 =ほぉ、この天界にもかね?
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