記憶混濁*甘い痛み*

『神経症においては、自我は現実にもとづいて衝動生活の一部をおさえつける。
 精神病においては、同じ自我が衝動生活に奉仕して、現実の一部から手を引く』


神経症および精神病における現実喪失…ジークムント·フロイト




一年前に読んだ心理学者の言葉を思い出す。


深山咲友梨の元婚約者…芳情院は『妻』である友梨の寝顔を見ながら、小さく溜息をついた。


綺麗な寝顔は、何故か泣いているように見えた。



一年前は…条野を忘れたくない一心で、自分で自分に目隠しをしたんだろう?友梨?


オレに負わされた痛みより、奴に与えられた甘さを抱いて、生きて行こうとしていたのだろう?友梨…





なのに。





今、オマエは、何もかも諦めて、心の瞳に刃を突き刺してしまったのか?


あんなにも恋し焦がれて、求め合った条野を想うより、憎む事を、恐れて……


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