祐雫の初恋

 その念が通じて、街中で、偶然に祐雫を見つけ近付いた。



「あら、桜河祐雫さんでしたわね」


 まだ乙女の域を脱していない紺色の清楚なワンピース姿の祐雫を

上から下まで見下ろして、


(このような小娘に慶志朗を横取りされるなんて)


麗華は、苛立ちを覚える。


「お久しゅうございます、麗華さま。

 ご機嫌いかがでございますか」


 祐雫は、煌めく輝く美しさの麗華に見惚れながら、お辞儀をする。


「おひとりなの」


 麗華は、輝く髪を後ろに靡かせて、作り笑いを浮かべた。


「はい。図書館へ参るところでございます」


 麗華は、幼さを残す祐雫の表情を見るにつけ、

ふつふつと嫉妬心が燃え上がった。


(慶志朗の眼は、一体何を見ているのかしら。

 全く理解に苦しむわ)


 麗華は、微笑みの裏で、拳を握りしめていた。

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