祐雫の初恋

「優兄ちゃま、祐姉ちゃま、おかえりなさいませ」


 お屋敷に帰ると、奉公人よりも先ん出て、里桜が優祐と祐雫を迎えた。


 里桜は、優祐に飛び付く。


 優祐は、里桜を抱き抱えた。


 里桜は、優祐の首に腕を回して、満面の笑みを浮かべた。



「里桜、ただいま」


 柔らかな里桜の頬に、優祐は、チュッとキスをする。


「里桜ちゃんただいま帰りました。

 里桜ちゃんは、優祐が大好きでございますのね」


 祐雫は、純真な幼い里桜を微笑ましく見つめた。

 年の離れた里桜は、桜河の家族皆の宝物として愛しまれて育っていた。


「里桜は、優兄ちゃまのおよめさまになるのだもの」


 里桜は、無邪気に優祐の頬へキスを返す。


「今日の優祐は、モテモテでございますわね」


 祐雫は、里桜の頬を撫でると、自室へと向かった。



(慶志朗さまのことは、

 優祐から応援していただきながら、

 優祐が環さんとお話しているところを

 邪魔するなんて……子ども染みてございました)


 祐雫は、優祐の飛躍と無垢な里桜の笑顔に触れて、

心ない自分に悔いていた。






 
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