祐雫の初恋
 
 アトリエの扉を開けると、店主が自ら優祐と祐雫を迎え入れた。


「ようこそ、いらっしゃいませ。桜河のお嬢さま。

 素敵なドレスの出来映えでございます。

 こちらでご試着なさってくださいませ。


 お坊ちゃまは、こちらの椅子にお掛けして、

 少々お待ちくださいませ。


 すぐにお茶をお持ちいたします」


 店主は、お茶の支度を促して、

祐雫を鏡の試着室へ案内した。


 薫子が名付けた『初恋のドレス』は、

淡紅色のシルクタフタに

シルクシフォンが重ねられた八重桜をイメージした

華やぎのあるドレスだった。


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