定義はいらない

日食

長野から帰って東京に戻ってから2日間

私の脳裏には松木先生が離れなかった。

私は松木先生の寝顔を見ながら誓ったことがある。

それは、この週末旅行を引きずらずに忘れなければならないということ。

どんなに笑い合っても、何度抱かれても

私は彼女じゃない。

そして、この関係を私から一歩踏み出してしまえば

この関係は終わる。

松木先生は私のことが好きじゃないから

別れ際に何も言わなかった。

4月も5月も一人でそれなりに楽しく過ごしてきたのに

私は久しぶりに一人だと実感した。

一人ってこんなに寂しいんだと改めて思った。

一人でいられるという強さを

松木先生のゴリマッチョの腕で砕かれて

私の弱さが裸とともに全面に晒されてしまった。



誕生日プレゼントは手渡しできずにテーブルの下に置いて来た。

2日間経ってもまだ見つけていないのか

見つけたけれど興味がないのか

松木先生からの連絡はなかった。
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