36.0℃の熱帯金魚
「そろそろ寝ようか、マリ」
「そうね」
グラスの底に残った、最後の一口を飲み干す。
カラリと、唇にあたる、氷。
あたしは鼻を通っていくライムの香りに目を細めた。
「そうだ、マリ」
「なあに」
「春物のコートが欲しいって言ってただろ? 明日、買っておいでよ」
組んでいた艶めかしい脚をほどき、ケイゴはソファから立ち上がる。
「うん……。そうする」
素直に頷きながら、あたしもその後に続く。