シンデレラ★バレンタイン
* * *


家に入るのはなんだか億劫で、私はそのまま玄関に少しだけもたれて貴也を待った。
ものの5分くらいで、見慣れた車がやってくる。


玄関の前でその車は止まり、右側のドアが大きく開いた。


「待ってるなんて言ってくれたの、初めてだよな?
…だからちょっと焦った。余計早く会いたくなったし。」

「…そんなに焦らなくても大丈夫よ。」

「焦るなっつー方が無理だって。
里穂、ほっぺも鼻も赤い。…寒かった?」


貴也の両手が、私の両頬に触れる。
…貴也は私に触れることを躊躇うことがない。


触れられた瞬間、ふわりと貴也の香りが私の鼻に届く。
貴也の手はいつだって温い。


「温かいだろー俺の手!」

「…そうね。丁度良いわ。」

「じゃあ、調子に乗ってもうちょっと温めてもいい?」

「…じゃあ、そうなる前に先に渡してもいい?」

「え…?」

「今日渡してしまったらちょっとフライングだけど、まぁ1日くらい気にしないわよね?
…明日、バレンタインだから。」


私は持っていた箱を貴也に差し出した。
…表情は笑ってはいないけど、怒ってもいない、つもりだ。
無表情よりは少し、柔らかくしているつもりでもある。

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