赤い狼 四





「シャワー浴びてくる。」





真っ赤な前髪をかき上げながら着替えを手に取る目の前の男が無表情でそう呟く。




「おー。いってらっしゃい。」




また派手にやらかしたな、と目を細めながらさっき淹れたコーヒーを口にして、そこで視界に入ってきたものに目を止めた。




隼人のシャツや顔のところどころに付いている赤い跡。



それは隼人のものじゃあない。




さっき、《SINE》の占めている場所で暴れていた奴等を少し痛めつけてやった時の返り血だ。



誰のものかなんて分からないけど…、隼人一人でも全然余裕で次々と襲ってくる奴を倒してたから倒された奴等の血はほとんど浴びているだろう。



きっと、何十人かの血が隼人にこびりついているに違いない。




さらり。




隼人の顔や服に付いた赤が、しなやかに揺れる真っ赤な髪と同化する。





その横顔を見て、あぁ。やっぱり隼人には赤が似合うなんて思うのは今更な感想だけど、本当に似合う。




赤とは、隼人のためにあるような錯覚さえ起こさせる。




情熱の赤、返り血の赤、一際目立つ赤、隼人の好きな、赤。





赤は、隼人の色だ。





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