悲恋エタニティ
もしかしたら望んだら手が届くのではないかと錯覚する。

私に『春』が来るのではないかと。

それはなんて残酷で、甘美な幻なのだろう。


―――春よ、来い。


動くことの許されない場所から呼びかけ続ける。


…ずっと。
……ずっと。

―――春よ、来い。


目前の景色が滲んだのは

雨のせいか

それとも
涙のせいだったのか。


桜が見えた気がした。

満開の桜が。

美しい景色だと思った。

胸が潰れそうなくらい美しい景色だと思った。


―――春よ、来い。


私はきっと今日のこのすべてを忘れることはないだろう。

いつか死ぬ瞬間まで何度も鮮明に思いだすのだろう。

この雨とともに。

この桜とともに。

この恋とともに。


この


涙とともに。





< 112 / 120 >

この作品をシェア

pagetop