貴方の愛に捕らわれて
香織は青ざめた硬い表情で、後部座席に乗り込んで来た。
風邪がぶり返して具合でも悪いのかと、華奢な身体を抱き寄せたが、具合が悪い訳ではないらしい。
酷く疲れた香織の様子に、学校で何かあったのかと龍二に目だけ問うが、晃達からの報告は何もないようだ。
それはそうだろう。あれだけ釘を刺した直後だ。香織に手を出す馬鹿など居ないだろう。
なら、どうしたんだ?
強面な自分の風体を十分自覚している俺は、なるべく香織を怖がらせないよう注意をしながら、ゆっくりとした口調でどうしたのか聞き出した。
香織の疲労の原因は、思いも寄らないものだった。
沢山の人から注目され、いたたまれなさと極度の緊張で疲れたのだと言う香織。
まさか、よかれと思ってした事が、香織に負担を掛けていたとは……
俺は香織の言葉に愕然とした。