貴方の愛に捕らわれて
 

大柄な猛さんが私の名前を叫び、物凄い速さで迫ってくる様は、いつかテレビで見た事のある、獲物に襲いかかるヒグマのようだった。



その余りの迫力に身がすくんで固まる私を、あっという間にたくましい腕が捕らえ、キッチンからリビングへ強制移動させらる。



そして青ざめる私にまさかの一言。



「火傷をしたらどうするつもりだ。火は使うな」



……………。



私、家事歴約10年なんですが……。



その後、1時間以上に渡る説得により、ガスの使用と家事を任せて貰う事の了承を得た。




私が家事をする事については、最後まで難色を示していた猛さんだったけど、バイトも辞めて時間を持て余している事と、知らない人(ハウスキーパーさん)に洗濯とか掃除をしてもらうのは、ちょっと抵抗がある事を説明したら、渋々ながら折れてくれた。



(随分後になって、この時、私がハウスキーパーだと思っていた人達は、本当は猛さんの組の若い衆だったと知った時には、恥ずかしさで死ねると思った)



 
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