貴方の愛に捕らわれて
 

出過ぎたことをって叱られるのも覚悟してたのに、どうしてだか機嫌の良くなった猛さんに、龍二さん達の目の前でキスされてしまった。



余りの恥ずかしさに、心臓はバクバクと激しい鼓動を打ち、頭もクラクラして言葉も出ない。



そんな私に対して、猛さんは大人の余裕とでもいいますか、ニヤリと笑うと更に私を翻弄する。



「時間のある時だけでいいから、本宅の花の面倒を見てくれないか」



猛さんのこの言葉は、甘美な痺れとなって私の全身を貫いた。その甘い痺れは、私の体を、心を、激しく揺さぶった。



愛されてるのも、大切にされてるのも十分わかっていたけど、猛さんと結婚してから何かを求められることがなくて、凄く我が儘で贅沢なことだけど、どこか疎外感みたいなものを感じてた。



陰では私の存在を快く思ってない人達もいて、彼らにとって私は厄介な客人。



時には、無益な人間の癖にどうしてここにいるのだとか、気まぐれで飼われているペットは大人しくしていろと、剥き出しの敵意を向けられることもあった。



だから猛さんのその提案は、お前はここに居てもいいんだよって言ってもらえたようで、ちょっぴり折れそうなってた心に、勇気と力をくれた。




それから修学旅行までの一週間、私の日課には花壇の水やりの他に、本宅の花の管理が追加されて、とても充実した毎日をおくることが出来た。



 
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