貴方の愛に捕らわれて

『………フッ…』




冷たいものが右の頬を伝う。






香奈さんと暮らし始めたのは3年前。



それまでは祖母の家や親戚の家を転々としていた。



3年前、叔父の家を追い出されて行き場の無くなった私を、香奈さんは引き取ってくれた。





いつか“お母さん”が迎えに来てくれる事を夢見ていた私は、凄く嬉しかったんだ。






だけど、現実は違ってた………





香奈さんは、迎えに来てくれた訳じゃなかった。




手の掛からなくなった私を、仕方なく引き取ってくれただけ。




それでも、最初の頃は少しでも好きになってもらえるよう、必死に努力した。



香奈さんの役に立つよう、家の事は何でもした。



学校だって、学費免除の特待生として東山に通った。





けど、それが全て無駄な努力だと思い知るのに、1年もかからなかった。



 

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