怪談
ドライヤー
同僚のKは、たまに凄い状態の頭で出勤してくる。

理由を聞くと昨夜、髪を乾かさなかった為こうなるのだという。

なぜ乾かさないのかと聞くと、夜更かしをしたのだと笑う。

いくら夜更かしをしたとしても乾かさないと髪が痛むし風邪をひくだろうと注意したとき


「深夜二時以降は絶対にドライヤーは使わない」


と、きっぱりした返事が返ってきた。

その際聞いた話だ。


ある時、気付くと深夜一時をまわっていた。

テレビを見ながらいつのまにか眠ってしまっていたらしい。

しまった。
明日仕事やのに。


そう思いながらKは風呂に入った。

風呂から上がると、深夜二時を過ぎていた。

今からだと何時間眠れるのだろうと計算しつつ、少々急ぎ足で洗った頭をドライヤーで乾かす。

その時、背後に人の気配を感じた。


何?


鏡越しにちらりと背後を見るが誰もいない。

何も変わった様子はない。

乾かすのを続ける。

だが、どうも違和感が拭えない。

あまりに気持ちが悪いので、意を決して振り返った。



灰色の顔の男が

間近い所で
Kを睨んでいた。




悲鳴をあげる前に男は消えた。



『深夜のドライヤーがうるさい』と


怒られたのだと思った。



「もうあんな怖い思いしたくないから、
深夜二時以降は絶対ドライヤー使わへん」


Kは頑なにその戒めを守っている。




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