彼の瞳に捕まりました!


『先輩?』

「あ、ごめん。
高瀬の携帯なんだよね?」

『そうですよ。
あ、でも、行成、今シャワー浴びてるから……』

「あ、そ……なんだ」

『折り返し電話かけ直すように言いますか?』

「え?あ、大丈夫……」

『そうですか?』

いつもと変わらないサトコちゃんの声。
そんな彼女に手の震えが止まらない。

「遅くにごめんなさい」

サトコちゃんの返事を聞いて通話を終える。
その途端、止めたはずの涙がぼろぼろと溢れだした。

「麻生ちゃん」

黙って様子を見つめていたマサル君が、そっと手を握った。
その手にすがるように握り返すと、マサル君は背中にもう片方の手を伸ばしてゆっくりとさすり始めた。

「麻生ちゃん。シッカリして、あの子の狂言なのかもしれないわ。
だいたい今日のバスの中の行成の態度、明らかに麻生ちゃんに対する態度っは違ったもの。
ね?だから、泣かないで」

マサル君の言葉に頷きながらも、素直にそう思う事が出来ない自分がいる。

だって……
高瀬は……



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