彼の瞳に捕まりました!


「高瀬の事で、ですか?」

思わず小声になって返事をしていた。
キョロキョロと周りを見渡し確認する。

サトコちゃんは、まだ木村さんのお説教が終わっていないらしく、部屋の入口近くでうつむいている。
私のデスクに近い人達は、デスクに座ってはいなかった。

『電話では何ですので、1度会ってお話させていただけないでしょうか?
とても大切な話しなんです』

大切な話し……

高瀬にとっての大切な話しを、どうして私に話すのだろう?

疑問がむくむくと沸き上がってくる。

「私でいいんでしょうか?」

『はい。
麻生さんにお話しがあるんです』

「わかりました」

迷う事はなかった。

今まで、なんの関わりもなかった人の誘い。
理由もよく分からない、その誘いに、迷う事なく返事をしていた。



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