彼の瞳に捕まりました!
新創刊の雑誌の編集部。
それは、会社の上層部からも期待という名のプレッシャーがかけられる。
そんな場所。
その編集部への移動は、私の今までの頑張りが認められたかのように感じて、嬉しさと共に身が引き締まる。
そんな思いがした。
その編集部への移動日。
ダンボール2箱分の荷物をキャスターに載せ、新しい部屋の入り口をくぐり抜けた私の前に、彼はいた。
あの時よりも、精悍さを増したように感じる、最低最悪な男。
高瀬行成が―――
「よ、久しぶりだな。麻生」
あの時の事なんて、忘れたかのように高瀬は私に話しかけてきた。
そんな彼に、目を丸くしたまま返事ができない。
「なんだよ?麻生」
「え?あ?あぁ、久しぶり」
しどろもどろに返事をした私に、高瀬は以前見せたような意地悪な瞳を見せると、
「相変わらず、ボケッとしてんのか?」
そう笑った。
「ち、違うわよっ!
高瀬君がいるなんて思わなかったから、驚いただけです」
「あっそ」
高瀬は興味なさげに、一言そう言って自分のデスクであろう方へと歩いて行った。