彼の瞳に捕まりました!


タクシーが揺れる度、一緒に身体が揺れる。
そんな私を気遣うように社長の手が私の肩に伸び、自分に引き寄せるように力を込めた。
その力に抗う事が出来ずに、されるままになった。

「大丈夫?」

髪を指で梳きながら問い掛ける社長に、黙って頷く。
一言でも発したら、車内特有の臭いに吐き気が襲ってきそうだった。
だけど、社長はそんな事に気づくはずもなく、肩にまわした掌の力を徐々に強めて行って、そのまますっぽりと抱きしめられている格好になっていた。

「お客さん、この辺でいいの?」

運転手さんの言葉にハッとして、慌てて身体を社長から離し、辺りを見回した。

通いなれたコンビニ。
この奥の通りにアパートはある。

「ここで大丈夫です。ありがとうございます」

鞄から財布を取り出そうとする私の手をやんわりと社長は握り締める。

「ちょっと待っててもらっていいかな?」

運転手さんは、無言で頷くとドアを開けた。

手を引かれてタクシーを降りると、ゆっくりと息を吸い込んだ。
外の空気に触れて、体中に回っていた吐き気が少し和らいだ。
そんな気がした。


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