思い出博物館
「ふぅん」

 僕は目の前の硝子ケースに入れられたモノを眺めた。それはどれも、こう言ったら失礼かもしれないけれど、どうでもいいようなものばかりだった。本当に引き出しの奥に眠っていそうなものばかり。

 折れた鉛筆。
 カラフルな輪ゴム。
 インクの切れた万年筆。

 むしろ…思い出したところでどうだというのだろうか。
 いや、それ以前に、こんなもの思い出すのだろうか。思い出す前に、大掃除の時にでも捨てられてしまいそうな代物ばかりだ。

「取りにくる人って、いるんですか?」

 僕は硝子ケースを指差して、主人に尋ねた。

「ええ、居ますよ。不思議なものですね。ここは随分前から開いているのですが、展示品は同じ数で…絶えず入れ替わっているんです。不思議ですねぇ」

 主人は表情を変えず、にこやかにそんなことを言った。

「そうそう」そう言って、店主は手を叩いた。「あなたも一度取りにきているんですよ」

「え? 僕も?」

「はい。とてもびっくりしましたよ」

 そんなびっくりされるような大層なもの忘れたことあったっけ。僕には思い当たる節は無かった。
 そういえば、ある日突然、国語の教科書が無くなって家中ひっくり返しても無かった時があったな。あれとはまた別か。神隠しか?

「写真があるんですよ。あまり見ないものなので、つい」

 そう言って、店主は僕から離れ、本棚からアルバムを取り出した。きっと、珍しいものはファイルしてあるのだろう。

「これです」

 店主は数ある写真の中から一枚を指さした。
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