ボクは桜、キミは唄う
『ちょっと柚木、何かあったの?楓花がいないって探しに行ったきり2人ともいなくなるし、靴見たらないし、電話しても出ないし……』

興奮したナカちゃんの声は私にまではっきり聞こえてきた。

「あー……うん」

『うんじゃないよ。どうしたの?楓花は?大丈夫?無事?』

「う……ん」

無事と言えば無事だけど、無事じゃないと言えば無事じゃない。

柚木君は答えづらそうに言葉を濁した。

『無事なの?今そこにいるの?楓花の携帯にかけても出ないからさ』

「あー……うん。今、一緒にいる」

『本当?じゃあ大丈夫なの?またマネージャーに何かされたんじゃないかと思って気が気じゃなかったんだからー』

ナカちゃん……

『今どこ?』

「俺んち」

『そっか。ならいいや。良かった。もぉ心配でお腹痛くなったよー』

ナカちゃんの隣から『大丈夫だった?』と聞く北川君の声がした。


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