海上船内物語
■両刃の剣

□屈











□ □ □



アキは、早朝のまだ薄暗い中、ゆっくりと隠し扉を押し開けた。


早朝の微弱な日光だけが入る、薄暗い部屋に入ると、アキはそこに屈む。



「・・・・・・・・・・ガルフ・・・・・・・・・」


部屋の壁に夥しく付いている、色褪せた血痕に触れる。


かたん、と後ろで物音がした。



「・・・・・・・・・誰だ」


アキが振り返ると、そこには顔面蒼白のウルの姿があった。


「・・・なんだ、ウルか。どうしたんだ?」


アキが立ち上がる。
ウルは言葉を喉に張り付かせたような声で、呟いた。



「船長、その血痕・・・・・・・・・、」


アキが視線を落とす。


「・・・・・・そうだな、船員にはこれを見せたことが無かったな。


ガルフは、丁度船長室で殺されたんだ。血痕が取れなくなってしまって、この有様だ」


ウルが隠し部屋にゆっくりと入る。
いつものウルからだと窺えない、焦った表情が見られた。



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