海上船内物語

□弄





ひゅう、ひゅう、と冷たくなった潮風が吹き抜ける。


辺りはまるで、何かを恐れるように静かになり、静寂に包まれた。
ぞわり、と寒気が襲う。



限りない水平線に、一つの影が見えた。

目を細めないと見えない、小さな影。




全員、息を呑む。


ぞくり、と鳥肌が立つ。


溜め息が聞こえた。






“何か”が翻弄するように始まった、ほんの序章の瞬間。


海は、何も変わらない。





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