海上船内物語
■夢










□ □ □



ぎしぎし。

作りの脆いベッドは、彼女が寝返りを打つたびに、嫌な音を立てて軋んだ。


アキは体を起こしながら、眠気眼でぼんやりそれを眺めている。


「・・・・・・・、は・・・・・・・」


顔をしかめては、苦しげに歪ませ、少し収まったかと思うと、また苦悶の表情になる。

彼女の額は汗で滲んでいた。


何かに怯えているような。


アキは思わず手を伸ばして、その頭を撫でる。


「・・・・・、は・・・・・・・・っ、」


蒼い目は開かれた。

流石にそれには驚いたようで、アキは声を漏らしてしまった。


彼女、カイルは勢いよく体を起こした。


そして、アキの姿を目に入れると、すぐに後ずさって、壁にひたりと張り付いた。


「・・・・・、さい・・・・・・めんなさい・・・」

「あ?」


小さく紡がれる言葉が小さすぎて、アキは顔をしかめた。



< 286 / 298 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop