瞳に映る青
足音でその2人がこちらに来るのがわかる。
僕に警戒心と緊張が走る。

「こんにちは」

まず若者の医者が話しかけてきた
目の見えない僕でも若い医者がベットの上の僕の視線に合わせ中腰で話しているのがわかる。

「今日の具合はどうかな?」

続けて質問してきた。
僕は無言のままシーツの端を手いたずらしている。

若い医者はそれまでしていた中腰を止め、僕に合わせていた目線をそのまま中年の医者に向けた。

少しの間の後、中年の医者が話しかけてきた。

「春日 淳くんだったね。私達は担当医であり、これは仕事でもあるのだよ。だから君の現状を知ることも仕事なのだよ。わかるね?」

いつもの口調で、諭すように言う。

僕はつぶやくように答えた。

「変わりありません」

中年の医者は露骨に呆れた顔をした。

「ふー」と鼻から息を吸い、鼻から息を吐いている。

中年の医者は何も言わずに背を向け去って行った。

すかさず若者の医者がフォローするかのように

「川上室長は人付き合いが苦手でね・・・」

苦し紛れのフォローの為、後に続く言葉が出てこない。

廊下から中年の医者、川上とか言ったか・・・
彼が若者を呼ぶ声が聞こえる。

「仲上、行くぞ。早く来い」

どうやら若者は仲上と言うらしい。

仲上は一言だけ

「じゃあ、またね」

とだけ残し走り去って行った。
彼らは僕を子供だと思ってあんな態度をとるのだろうか?
目が見えないからだろうか?


僕が目が見えなくなったのは9歳の時。
とても晴れた日にサッカーの練習に向かう途中、急に目の前が真っ暗になりその場に倒れ病院に運ばれた。
検査などがあり、そのまま入院。
そのときはこんなに長い入院になるとは考えもしなかった。

子供の僕に気を使ってなのか、両親もさっきの医者達も僕の目について詳しく話そうとしない。
でもなんとなくわかるんだ。
僕の目はきっと治らないだろう・・・僕はそう思っていた。

入院してから5年になるが何の変化もないのがその証拠だ。


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