Colorful World
『大事なことはちゃんと言葉にするよ!じゃないと伝わらないじゃない。』


旭の言葉がそのまま旭の声で蘇る。


旭の言葉に反射的に返した言葉は、自分でも意図しないものだったんだ。
だから少し驚いた。だから君に届けて良いか分からなかった。


『伝えたいよ、旭。この声で。』


思わず早口でそう零れた無音の声。
こう言ったら君が酷く切なそうな顔をしてしまう気がして、伝えなかったんだ。


僕は髪を撫でる手を止めずに心の中で呟き続ける。





…ねぇ、旭。
明日は伝えたいことがたくさんあるよ。


空さんが料理を褒めてくれた。
だから明日からは僕がみんなの分を作るよ。


あの男の子の看病は旭が仕事の間もちゃんとやっておくから心配しないで。


もう一人の子には会ってないから、早く会ってみたい。


そして…二人の名前を一緒に呼びたいね。


『名前、呼んでくれてありがとう。』


この耳に、とても優しく音が響いたよ。
いつか、僕もこの声で君の名前を呼びたい、なんてそんなことを思ってしまうくらい嬉しかった。





僕は立ち上がって灯りを消した。
ブランケットを抱えてドアを閉め、リビングへ向かうともうそこには誰もいなかった。
ソファーに横になって、上からブランケットを掛けそのまま目を閉じた。

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