仇恋アベンジャー
恵一は私が作ったケーキをつまみ、冷めかけのコーヒーをすすりながら私が泣き止むのを待った。
「ちょっと痩せたな。ちゃんと食ってるのか?」
「食べてますよ。雄輔が作ってくれるし」
私と彼のつたない会話をファンヒーターの動作音が繋ぐ。
部屋は十分に暖かいけれど、私の手は震えている。
「お袋から……いや、育ての母親の方から連絡があった」
ビクッと体が反応した。
頭に彼女の怒り狂った顔が浮かぶ。
「俺の産みの親の娘だという女が乗り込んできたってさ」
もちろん、私のことである。
しかし、そうとは言わずに黙って聞いた。
下手に喋るとまた泣いてしまいそうだからだ。
「その日からお前と連絡が取れなくなった。もしかしたらその女はお前かもしれないって、すぐに思った」