Rest of my Prince
 

緋狭さんは、何かを見越している。


――闇に芹霞を滅ぼされるわけにはいかん。

――すぐ揺らぐ弱い男に、芹霞は渡せん。


強ければ、俺でなくてもいいのか。

だから煌や玲の背中をも押すのか。


そう邪推してしまいたい時もあるけれど。


いつでも俺達に手を差し伸べる彼女の、

その慈愛深い瞳においては――


それはあまりに微細な妄想で。


俺達が俺達であるために――

芹霞が必要なのかも知れない。


俺達の中にある闇が、

芹霞を求めているのかも知れない。


ただの恋情を超えた――

自分の存在意義にまでなっているのなら。


そこまで根強く芹霞に縛られた俺には、

芹霞以外の道を歩む未来は考えられず。


今在る全ての環境が、芹霞に繋がっている。


そう思えば――


――緋狭お姉ちゃん、ありがとう。


俺が唾棄したい姿での、緋狭さんとの出会いは決して偶然ではなく。


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