Rest of my Prince
 煌Side
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――月が綺麗な夜だ。

――如月煌と名付けよう。


初めて緋狭姉とまともに会話したのは、昔昔の2月の月夜。


BR002と呼ばれていた俺は、そこから"如月煌"となった。


出会いなんて覚えちゃいねえ。


だけど俺にとって緋狭姉は救い手で。


今の俺が、誰よりも"感情"を表にに出すようになったのは、"愛情"をくれた神崎姉妹のおかげ。


特に緋狭姉の愛情は、とても大きくて、痛くて、苦しくて。


本当にもういらないデスと逃げ出したくて仕方が無いけれど。


謹んでお返ししても、更に倍以上になって跳ね返ってくる…厄介…いやありがたいものだけれど。


それが緋狭姉流の愛の示し方だと思っていた俺は、俺以外の奴らと緋狭姉の接し方がまるで違うことに驚いた。


何故だ!!?


思い返せばイロイロあった。


――ほほう、芹霞。煌が人参を食わないとな? お前のやり方が生温いのだ。やるならもっと徹底的に。寝ても覚めても人参で行け。


俺の嫌いな橙色。


食べてもおいしいとちっとも思えない緑黄色野菜。


緋狭姉と芹霞がにやりと笑った時から、俺の周囲は人参で溢れた。


おかずは無論、人参ご飯、人参味噌汁。キャロットケーキ、キャロットジュース。

飯からデザート、飲み物に至るまで、全てがあの橙色。

後で聞けば、玲が暗躍したという。

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