Rest of my Prince
 煌Side
****************


変な視線を感じる。


殺意や敵意ではないが…何か…慣れたようでいて気が許せない、そんな妙な視線。


俺は条件反射で櫂の傍に張り付いた。


「煌…この視線は、気にするな」


櫂には珍しく、歯切れ悪い口調。


「だけどよ、ここの処ずっと…ねえか、この視線」


俺の顔は警戒に強張ったまま。


「本当に…何してるんだか。"必然"ではないことを祈るよ」


櫂は大きな溜息をついて、苦笑している。


「何のことだが判らねえけどよ。だけどま、お前が何か知ってて納得済みなら、俺も必要以上に詮索はしねえがよ」


櫂は――

敵の察知が早いから。


櫂が大丈夫だというのなら、本当に大丈夫なのだろう。


俺達紫堂の警護団は、緊急事態に陥らない限りは、やたらめったら武器を顕現することは赦されていねえ。


武器を使う程の相手も、日常生活において差し向けられる刺客ぐらいなら、片手だけで充分。


元来、武器など使うのは、俺と桜くらいなもので。


その桜も、緋狭姉に師事して顔つきが凛々しくなってきた。


だから俺も基礎鍛錬しようと、毎日朝から汗みどろ。


そして家帰って風呂入ってさ、出てきたら芹霞が作ったご飯があるなんて、もう本当に最高の環境だと思う。


たとえ芹霞が、参考書片手に俺と目を合わさなくてもさ。


別に芹霞ががり勉になっちまっても…俺と芹霞は同じ屋根の下なんだし。


たとえ芹霞にやたら張り付く、宮原と遠坂が…勉強会という名のお泊り会を連続決行していようがさ。


遠坂なんて、兄の榊が怒るから一旦家に戻るって櫂の家を出たのに、神崎家ばかり泊まりにくるのをおかしく思ってもさ。


辛抱強く2人の時間を待ちに待って、触れた途端、"絶交"の一喝くらってもさ…。


しな垂れた俺をげらげら笑い転げて見ている女2人が居てもさ…。


別に…いいけど…さ。


…………。


……はあ。
< 39 / 235 >

この作品をシェア

pagetop