Rest of my Prince
 桜Side
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視線――。


誰もがもう気づいている。


今では確実に視界の中に入る、赤色と青色。


しかし一定の距離を保って、それ以上踏み込もうとしない。


何故、ここまで視線を寄越すのか。


「なあ…"桜"。お前持ってるクマ、せりから貰ったの?」


突然久遠から話しかけられた。


私は、こくんと頷く。


「どことなく歪で、せりの指先の絆創膏見てれば…せりの手作りか。それに対してあいつらが何も突っ込まないところを見れば…きっと何処か噛んで、自分も協力したと自己主張しているんだろう。

男のくせに手芸なんて…ま、お前の女装を許容してるあたり、そんなのはどうでもいいことか」


そう嘲笑って私の手の中の灰色のテディベアを一瞥する。


芹霞さんと櫂様と玲様と…きっと戦力にはならなかったろう馬鹿蜜柑と。


皆で作ってくれた新しいクマ。


黒いクマはこの地で捨ててしまったけれど、どうしてもこれは捨てられない。


私が――執着している。



「ところでさ、お前…傷はいいの?」


瑠璃色の瞳が私に向いた。


私はまた、こくんと頷いた。


「だけど…克服出来てないだろう?」


何を?


聞き返さなくても、私は判る。


「緋狭に…抜いて貰わないの?」


久遠という男は、私の体の変調を見抜いているのだ。

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