好きとごめんのその先に
「俺は夕梨亜の母親には会ったことはないが、…きっといい母親だったんだろうな」
「え?」
いきなり、どうしたのだろうか。
「俺が逆の立場だったら、絶対にそいつを嫌いになる。
…なのに少なからず俺を受け入れてくれるお前は、人を嫌うことを知らない澄んだ心を持っているってことだ。
そんな風に育てた母親は、すごいと思う」
そう言って、忠見さんはわたしの頬を撫でた。
指先から彼の体温が伝わってくる。
…この人、こんなに優しい触れ方もするんだ。
………って。
「…っ別にわたしだって、誰かを嫌だと思うことはあるよ。
あなたに嫌悪感を抱くこともあるわ」
彼に流されそうになる前に、我に返った。
こんなだから、受け入れたとか思われてしまうんだ。
「…はは、そうか」
そう言ってまた寂しそうに笑う彼に、今度はわたしが背を向ける。
「…でも、ママをいい母親だって言ってくれたのは嬉しい。…ありがとう」
「本当にそう思ったから言っただけだよ」
落ち着いた声が、後ろから飛んできた。