好きとごめんのその先に


「ゆりちゃーん」



玄関先から、わたしの名を呼ぶ奏多の声。



相も変わらず、近所に響き渡る大声…



「入ってきて」


「はーい、お邪魔しまーす」



窓から顔を出して呼ぶと、わたしの部屋まで上がってきた。



「はい。バレンタインチョコ」



手作りじゃないけど、と言って渡すと、あははと笑いながら受け取ってくれた。



「今年のも、甘いやつ?」


「うん。もちろん」


「へへ、ありがとう!ゆりちゃんも1つ食べる?」



そう言いながら封を開け、個包装のものを1粒、差し出してくれる。



パパも奏多も、優しいな。

なんて考えながら、くすっと笑って受け取った。



「んー、生チョコうめー、とろけるー」


「うん、ほんとだね」



美味しいね、と2人で微笑んで、まるで子供の頃に戻ったよう。



奏多と一緒に食べるから、きっと数倍美味しい。



やっぱり、チョコレートも思い出も、甘い方がいい。
< 220 / 428 >

この作品をシェア

pagetop