豹変上司に初恋中。
「昴さん」

声からして女の人だということは分かる。
……本当に、この人は女の影が絶えない。


「……」


昴さんはその声に耳を傾けようとせず、そのまま後ろを向いたまま。



「昴くん?」

もう一度、その声は彼を呼ぶ。対して昴さんはやっぱり無視。

呼んでるのに……っ


なんだかその間に居るのもいたたまれなくなって、私は慌てて彼の腕を取った。


「昴さん!」

「!」


突然変わった私の呼び方に、昴さんは驚いたようにこちらを見る。
弁解する間もなく、向こうにいる女の人は近付いてきていて。

「その、」

誰かが呼んでる、と言おうとして、でも、それを言ったら彼はその女の人と? なんて、思いとどまった。

結局口ごもる私に昴さんは息を吐く。


< 86 / 194 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop