僕らが今いる今日は

ついに県総体が始まり、初日の昨日は400メートル予選・準決勝・決勝の順に行われ、桐島が3位に入り、インターハイへ一歩近づいた。

けれども、桐島は派手に喜ぶことはなかった。

決勝には坂高の2年生も出場していたのだが、8位と涙を飲んでしまった。

6位とのタイム差は0.44秒で、桐島はゴール直後からずっと後輩に付き添っていたのだ。

その後輩が今日の朝には元気に顔を出していたから、やっぱり桐島は凄い。


「400を3本、4継(4×100メートルリレー)の予選も走ってって、何種目も出る奴は本当に大変だよな」


桐島は400メートルの他に、800メートル、4継、マイルリレー(4×400メートルリレー)と4種目に出場しているため、大会中はほとんど休みなく走っている状態だ。

もちろん、他の選手でも何人かいるがそういった選手は本当に大変だと思っている。


「さすがに3年となると慣れてきたよ」


前日まではさすがに緊張の糸が張り詰めていてピリピリしているのが伝わってきたが、400メートルで入賞したこともあって、だいぶ余裕が出てきたようだ。


「昨日の400はいいレースだったぞ。

ヒラオカマコト見ていたかな・・・

あっ」


気づいたときには口から言葉が出てしまっていた。



一昨日、実は木原さんにメールでヒラオカマコトと観に来てくれと頼んでいたのだ。

木原さんは「私は絶対に行くけど・・・」と言ってくれたが、ヒラオカマコトのほうは誘ってはみるけど来るかどうかは分からないと言われた。

結局、スタンドをいくら見渡してもヒラオカマコトどころか木原さんの姿すら見つけられなかった。

恐らく観てくれてはいたと思うが、人を見つけるのが苦手だから分からなかっただけだ・・・

ということにしておこう。


「やたらスタンドを見渡していたのはそのためだったのかよ、まったく。

だけど、何で平岡なんだよ」


「ふっ、ふっ、ふっ。

みなまで言うな、桐島。

お前とは入部したときからの付き合いだから、何を思っていて、好きな人が誰かくらいは分かっているつもりだ」


そう言い、桐島の肩に手を乗せた。
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