僕らが今いる今日は
「あっ」


重い足取りで学校へ戻ろうとした瞬間だった。

店の入り口のすぐ横に、なんとほうじ茶シュークリームを2つ持っている女の子が立っているではないか。

売り切れになったとおばちゃんからさっき言われたばかりのほうじ茶シュークリームを、確かにその子は2つ持っている。


(2つだから、1つ譲ってくれないかな)


「あのっ」


頭で思うのとほぼ同時、もしかしたら声を掛けたほうが早かったのではないかと思うくらい、俺はすぐにその女の子に声を掛けた。


「何?」


声を掛けたはいいものの、ただでさえ女の子と話すことが得意ではない、いや苦手と言ったほうがいいのに、どうやってお願いすればいいのだろう。

だけど、ここはほうじ茶シュークリームのためだ・・・

やるしかない!


「すみません!

俺、ほうじ茶シュークリーム買いに来たんだけど売り切れになっちゃっていて・・・

その、もし良かったら1つ俺に売ってください!」


「え?」


顔の前で両手を合わせて言うと、女の子は少々驚いた顔をしていた。


「お願いします!」


とにかく勢いで迫ると、女の子は持っていた2つのうちの1つを差し出してくれた。

これは、完全に勢いに任せたもの勝ちというものだろう。


「ありがとう!

あっ、お釣りはいらないから。

本当にありがとう!」


お釣りはいらないと言っても、たかだか20円の話で女の子からしてみればどうでもいいことだろう。

何か言いたそうだったが、嬉しさで舞い上がってしまい、その場からすぐに立ち去ってしまった。



この気分のままにロードを走るのも悪くないな。

今ならどこまででも走っていける気さえする、こんな俺は相当に単純な男だ。


「って、制服のままじゃん」


ようやく、自分が制服のままだということに気づき、渋々学校へと戻ることにした。

部活が終わってからの楽しみにするため、ほうじ茶シュークリームを大事に持って・・・
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