ガルドラ龍神伝―闇龍編―
五人は音に反応するように、それぞれの武器を構える。


だが、アイルの腕は鎖をしっかりと握っているものの、どこか臆病になっている雰囲気が漂う。


彼は身震いしながら、水色の鎖を握り締める。


(アイルって、本当に怖がりなんだな。


未来の大公としての自覚を持たないと、到底氷龍戦士としてやってけないぞ)


ヨゼフは口には出さなかったが、アイルを怖がりと決めつける。


リタ達の視線の先には、何体か人形が倒れている。


だがそれらは、全て再起不能になっているかのように動かない。


「こいつら、操られてるのか?」


「いや、おそらく自分の意志で動いてるんだと思う。


そうでなければ、さっきの音は有り得ない」


リタとヒアが人形のことについてあれこれ言っていると、倒れていたはずの人形が一体だけ起き上がった。


人形は、五人を珍しげに見ている。


「な……何ですか?」


アイルは、おそるおそる人形に訪ねた。


すると、人形は意志があるかのように、魔族の言葉で話しかける。


「はじめまして。


私は≪ダブエット≫という、自律型人形です。


私のことは、≪ダブ≫と呼んで下さい」


≪ダブエット≫という人形は、自己紹介をしてから、リタ達にお辞儀をした。


赤色の髪を二本に分けて結っていて、茶色の目をしたこの人形は、まるで魔道族の民のような顔をしている。


それを見てナンシーは、キア領主のことを思い出した。


(キア……。今頃、どうしてるのかしら?


アルエスに生命力をほとんど吸い取られてるから、そう簡単に目覚めないと思うけど)


ナンシーは女性型人形ダブを、簡単に受け入れることができなかった。


彼女の尖った耳を見ているだけで、魔道族に奴隷として働かされていた自分達の過去を、思い出してしまうからだ。


「決まりだね。ダブ、一緒に≪アウン・ファレル≫への行き方を探ろう。


ナンシー、良いね」


リタは自分だけで決めてしまったと思い、ナンシーにダブの同行に対する意見を求める。


ナンシーはまだ迷っていたが、首を縦に振った。
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