ガルドラ龍神伝―闇龍編―
一方、リタ達一行は、火龍族の町から北に五キロ先にある葉龍族の樹海に向かっていた。


「≪耐葉属性マント≫なんて、二度と着たくないな。全種類のマントの中で、これだけ僕の体よりも一回り大きいし、霊媒師みたいだ」


「そんなに文句言うなら、背を伸ばす努力をすれば? 少しは恰好良くなれるかもよ」


ヨゼフの文句に対し、ナンシーが意地悪く言葉を返す。


彼は小さな声で、「大きなお世話だ!」と言い返した。


三人が葉龍族の村の近くまで来た時、背後から紫色の矢が跳んできた。


リタは他の二人を持ち上げ、上空に飛ぶ。


彼女は安全を確認すると、また二人を降ろした。


「ありがとう、リタ。助かったわ」


「本当。いきなり矢を射つなんて、怖いにも程があるよ」


「この矢、もしかして……」


リタは矢の持ち主を捜すように、辺りを見回す。


すると遠くの木に、顔が魔道師達と酷似している葉龍族の少年が立っているのが見えた。


「ヒア。あなたも、領国から脱出したんだね。妹には、会えたかい?」


「は?」


ヒアと呼ばれた少年は、リタの青い鬣を見て、急に態度を変える。


「なんだ。誰々来たのかと思ったら、君達か。八日ぶりだな、リタ姫、ヨゼフ、ナンシー」


「あれ? なんでリタが姫だって、わかるの?」


「なんでって、俺が子供の頃、奴隷部屋で彼女がこっそり教えてくれたからさ」


「あ、ずるい。ヒアには先に教えておいて、僕達には九年間隠して」


ヨゼフは半ばヒアにもあたるように、怒った。


リタは彼を宥める。


「まあまあ、そんなに怒らないでよ、ヨゼフ。


確かにヒアの言う通りさ。


でも、一応何か話さないと、と思って……」


リタは言い訳をした。


ヨゼフはまだ怒っていた。


その様子を見て、ヒアが提案する。


「ここで立ち話も何だし、俺の家に来いよ。君達の目的も知りたいし」


「わかった。是非、お邪魔するよ」


三人は彼女達と同じレザンドニウムの元奴隷戦士である、葉龍族の少年に連れられて、バデリウス村を訪れた。
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