これを運命とするならば





「父さんたちには子供がいなくて、私はこの会社を継ぐために拾われたんだと周りの人間から言われた。それを聞いた私は父さんに条件を出した」


「条、件…」


私がそう呟くと専務は小さく笑う。
いつものクツクツとした笑い方じゃなくて、自嘲的な笑みだ。


…どうして?
どうして私に聞かせるの?



「条件は二つ。会社に入るのは30になる手前。…あとは、絶対に結婚しないことだ」


そう言ってクツクツと笑い出すけど、その笑い方はやっぱり何か違和感があって、怖い。
私はただ専務のことを、目をそらさないで見ているだけで精一杯だった。





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