君のための嘘
「……働くくらいなら、霧生家に行った方がいい」


ラルフの言葉に夏帆はあっけにとられた。


「ひどいですっ!」


「君をスーパーマーケットでなんて働かせられないよ 何も知らないお嬢様だ」


「でも、働かなければ日本で生活出来ないでしょう お嬢様でも何でもやらなければいけないんです」


「なんでも……か……ならば、僕と結婚してくれる?」


心が蕩けそうなほどの甘い眼差しに、夏帆の心臓が暴れはじめる。


しかし、結婚をいかにも簡単そうに言うラルフは本気ではないはず。


からかわれているんだ。


そう夏帆は思った。


「本気で言っているんです!からかわないでくださいっ」


大きく首を横に振った夏帆に、ラルフも軽く首を振る。


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