君のための嘘
アメリカでは日本料理がほとんど食卓に出ることがない。


義母はお嬢様育ちでやはり料理が苦手だったから。


メイドさんは日本人ではなかったから、日本料理が食卓に出されなかったのだ。


久しぶりの煮物の匂いに思わず鼻をくんとさせてしまう夏帆。


懐かしい匂い……。


10歳の頃まで夏帆がいた孤児院の夕食には必ず煮物があった。


夏帆はテーブルセッティングだけでも手伝おうと、テーブルの上にランチョンマットを敷き、お箸を並べていると、ラルフが書斎から出て来た。


「夏帆ちゃん……」


箸を並べている夏帆を見て意外だと言うような顔になった。


「あ、もうすぐ出来るそうです」


「え?あぁ」


ラルフはテーブルに近づくと席に着いた。



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