君のための嘘
タクシーに乗り込むと、まずした事は身を低くすることだった。


そんな夏帆を見て、美形の彼はあっけにとられた表情で見ている。


「あの人たちはもういないですから大丈夫ですよ」


彼はタクシーの運転手に東京方面に向かう様に言うと、夏帆を見て言う。


こんな時なのに、なんて素敵な声なのだろうと思ってしまう。


「あ、はい ありがとうございます」


姿勢を直してメガネの縁を持ちながら、彼を見る。メガネが落ちない様にずっと押さえているせいで、二の腕がプルプルと痛みだす。


「大丈夫ですか?」


「はい あの、ありがとうございました 近くの駅で降ろしてください」


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