君のための嘘
ラルフは胸ポケットからお財布を取り出して、お札を数枚抜き取ると私の手のひらに置く。


「?」


「まったく持っていないのは困るだろう?」


確かになくては困るけれど……ここまでしてもらうのも……。


「夏帆さん?」


「は、はい……本当に迷惑ばかりかけてごめんなさい」


「迷惑だったら追い出しているから安心して」


「戻るのは19時過ぎると思う 食事は……近くに食べに行こう」


私に料理をしないでいいって言っているみたい。


それほど美味しくない朝食だったんだな……。


ちょっと落ち込みながら玄関に向かうラルフの後を追う。


「そうだ!夏帆さんの指紋を登録しなくては玄関を出たら入れなくなるな おいで、下に行けばすぐに設定できるから」


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